近年、企業の不祥事が「内部告発」によって発覚し、企業が危機に陥る事例が多発しています。
2021年
・N大学理事らによるリベート事件
・M電機による鉄道車両の検査不正
2019年
・K生命による高齢者への不適切営業
・K市教員間いじめ問題
2018年
・S銀行によるシェアハウス不正融資
・R21による施工不備がテレ東への内部告発で発覚
・財務省次官、女性記者のセクハラ告発で辞任
・N自動車のK会長が金融商品取引法違反で逮捕(内部通報)
2017年
・財務省近畿財務局による文書改ざん問題 (遺族からの告発)
しかし、こうした企業の不祥事が明らかになり、これが是正され、その結果、自動車の安全や食品の安全、公正な競争という国民にとって重要な利益が害され続けてきた状況を改善することにつながっています。
内部告発は、組織の内部事情を知る者が、その組織の中で不正や違法行為が行われていることを行政やマスコミなどの第三者といった外部に対して申告することをいいます。
それに対して、内部通報は、組織の内部事情を知る者が、その組織の中で不正や違法行為が行われていることを組織自身に対して申告することをいいます。
2006年4月より施行されたのが、「公益通報者保護法」です。これは、所定の保護用件を満たした公益通報を行った労働者を保護する目的で作られています。
しかし、それだけの目的にとどまりません。
組織内において犯罪事実や違法行為が認められる場合に、その組織に対して所定の保護用件を満たした公益通報者の保護を義務付けることをもって、その組織における法令遵守を実現させることを目的としたのが公益通報者保護なのです。
つまり、この法律の真の目的は、組織内において犯罪事実や違反行為が起きないよう法令遵守を実現させることであるのです。
「公益通報者保護法」により、社会的に公益菜通報者の保護が義務付けられました。
企業内に潜んでいる問題を是正するために、わざわざ外部に告発してもらい、外部の圧力をもって是正してもらうでしょうか?
むしろ、その問題を自ら発見し、是正・再発防止に取組みたいと考えるのが当然だと思います。
だから、外部に対して行う「内部告発」を推奨するのではなく、「内部通報」を推奨し、より早期に問題を発見・解決することを可能とする制度が必要なのです。